あおもり北のまほろば歴史館 見どころ案内 その2

 

展示コーナー⑧ 着物の世界

 

青森の刺しこ着

 補強や補修のために布を重ねて糸で刺す「刺しこ」は、江戸時代から明治にかけて日本各地で行われてきました。寒冷地のために綿花の栽培に適さない青森県では、長い間、麻布衣での生活を余儀なくされましたが、冬の寒さをしのぐために、麻布を糸で刺し綴られたものから、次第に独特な菱模様が生み出され、「刺しこ」とよばれる着物が発展しました。
 青森市教育委員会所蔵の刺しこ着は、県内の江戸時代後期から昭和初期までの庶民の衣服を代表するもので、その中の1,014点の「こぎん着物」「菱刺し着物」「木綿つづれ刺し着物」「サグリ(裂織着物)」が、平成12年1月19日に「青森の刺しこ着」として青森県の有形民俗文化財の指定を受けています。
 あおもり北のまほろば歴史館では、その一部を展示公開しています。

 

津軽地方のこぎん着物           南部地方の菱刺し着物

(『装う ─生活着にみる先人の知恵と技』(1999)青森市歴史民俗展示館「稽古館」より転載)



青森の刺しこ着の分布

 江戸時代に日本海側が津軽藩領、太平洋側が南部藩領に分かれていた青森県では、風土や気候の違いもあり、農漁民の衣服にはそれぞれ異なった形態がみられます。こぎん刺しが施された津軽地方のこぎん着物に対し、南部地方では菱刺しが着物や前だれ(前掛け)、たっつけと呼ばれる股引きに見られます。


青森県の刺しこ着分布図

(『装う ─生活着にみる先人の知恵と技』(1999)青森市歴史民俗展示館「稽古館」より一部改変転載)

 

こぎん刺しと菱刺し

 津軽地方では、保温や補強という実用性を目的とした刺しから、次第に「こぎん刺し」と呼ばれる独特の模様が生み出されました。こぎんは、「小布」「小巾」「小衣」などと書かれ、麻布で作られた短い単衣の仕事着を指す言葉です。藍染めの麻布に最初は麻糸で、後に白い木綿糸で刺した津軽地方のこぎん刺しは、基礎模様がいくつかまとまって単位模様となり、さらに流れや囲み模様を加えることで、大きな模様が構成されます。
 こぎん刺しは、津軽地方の3地域で主に作られましたが、地域ごとに特徴があり、東こぎん、西こぎん、三縞こぎんの三つに分けられます。東こぎんは、大胆で大柄な模様あるいは小柄の一種類の模様が使用されるものが一般的です。西こぎんは、肩に黒糸と白糸で細い横縞が施され、苧麻の細い糸で織った布にさしたものが多くみられます。また、三縞こぎんは、胸と背の部分に太い横縞が入るのが特徴で、やや大きめの着物が多くみられます。
 南部地方の菱刺しは、肩や腕の部分に横刺しの菱型模様が施されたものです。津軽地方のこぎんは、藍染めの麻布一枚に刺しているものが多いですが、南部地方では水浅葱色に染めた麻布を表とし、裏には古手木綿や白木木綿(うら白と呼ばれる晒のような木綿)を合わせて、黒木綿糸による横刺しが基本となります。

津軽地方のこぎん着物

(『企画展 刺しこの世界 ─受け継がれた技─』(2005)青森市歴史民俗展示館「稽古館」より転載)



【参考文献】
『装う ─生活着にみる先人の知恵と技』(1999)青森市歴史民俗展示館「稽古館」
『企画展 刺しこの世界 ─受け継がれた技─』(2005)青森市歴史民俗展示館「稽古館」