あおもり北のまほろば歴史館 見どころ案内 その1

 

展示コーナー② 津軽海峡沿岸のムダマハギ型漁船と漁業

 

ムダマハギ型漁船

 青森県や北海道にかけての地域で、古くから使用されていた「ムダマハギ」型漁船。これは、船の発達や地域による特徴を知る上で大変貴重なものですが、急速に姿を消しつつあります。
 あおもり北のまほろば歴史館では、こうした木造船を保存し後世に伝えるため、国指定の重要有形民俗文化財のムダマハギ型漁船コレクション67隻を展示公開しています。



ムダマハギの特徴と分布

 北日本地域の木造漁船に見られる大きな特徴は、ムダマハギと呼ばれる独特の構造の漁船が用いられることです。ムダマハギとは、船底にカツラやブナ・ヒバ・スギなどの丸木船を浅くしたような刳り抜き材を使用し、平底の船底に舷側板(タナイタまたはカイグといわれる)を接ぎ合わせた構造をいいます。刳り抜き材の使用により船底が厚く、丈夫かつ重量があるため、荒波に耐えることができ、波に流されず安定することから、磯漁に適しているとされています。こうした漁船は、東北地方の北部、太平洋沿岸では岩手県久慈市付近、日本海側では秋田県能代市付近以北から北海道にかけて分布しています。 
 船の発達過程については、これまでの研究により、一木で構成された丸木船から板合わせの構造船に順次変化し、その過渡的段階の構造として、刳り抜き材と板材をあわせた準構造船ともいうべきオモキ造りの存在が明らかにされています。ムダマハギは、構造的にオモキ造りに連なるものです。
 青森市教育委員会が所蔵する「津軽海峡および周辺地域のムダマハギ型漁船コレクション67隻は、丸木舟から構造船へと発展する過程をたどる貴重な資料として、国の重要有形民俗文化財の指定を受けています。

ムダマハギの分布地域

(『ムダマハギ 津軽海峡沿岸のムダマハギ型漁船をつくる』(2003)みちのく北方漁船博物館
                                     を参考に作成)

 

船体断面模式図

(『ムダマハギ ─津軽海峡沿岸のムダマハギ型漁船とその建造記録─』(2002)
                            みちのく北方漁船博物館 より転載)


ムダマハギの各部名称

 一般に、船は前部、中央部、後部の3部分に分けられます。前部はオモテ(表)、中央部はドノマ(胴の間)、後部はトモ(舳)と呼ばれます。
 イソブネをはじめ、漁船の場合は作業形態から、作業する側の舷をマエフネ、反対側をウシロフネともいいます。
 ムダマハギは、刳り抜きの船底部材(ムダマ)に、船首の水切り部分をミヨシ(水押)と、船尾の部分のトダテ(戸館)を付け、これにタナイタ(舷側板)を付ける構造です。イソブネの内部には、補強材としてアバラを入れ、タナイタの補強には、コベリ(小縁)を付けます。

ムダマハギの各部名称

(『ムダマハギ 津軽海峡沿岸のムダマハギ型漁船をつくる』(2003)
                           みちのく北方漁船博物館 より転載)


ムダマハギの用途

 ムダマハギは、主にイソブネとして漁師の生活を支えてきました。イソブネとは、海岸近くで磯漁に使われる船です。津軽海峡沿岸では、磯漁をイソマワリといいます。イソマワリでは、アワビ、ウニ、ツブ、テングサ、タコ、コンブ、ワカメなどをとります。ふつうは、1人で船に乗り、トモ(船尾)の左舷から身を乗り出して、口でガラス(箱メガネ)をくわえ、海底をのぞきます。右手で右舷のクルマガイ、右足のひざで左舷のクルマガイを動かして船を移動し、えものを見つけると、両手でホコを使ってとります。

漁労時の様子

(『ムダマハギで海に出よう ─和船の操船技術─』(2004)みちのく北方漁船博物館 より転載)


【参考文献】
『ムダマハギ ─津軽海峡沿岸のムダマハギ型漁船とその建造記録─』(2002)みちのく北方漁船博物館
『ムダマハギ 津軽海峡沿岸のムダマハギ型漁船をつくる』(2003)みちのく北方漁船博物館
『いのちの船 ~津軽海峡沿岸の漁業のあゆみ~』(2008)みちのく北方漁船博物館